2021年になり、ギガスクール構想の目玉として高校には電子黒板、学習用iPadなどのICT機器(自治体によって違います!)が大量に導入されました。
しかし、設置から半年が経過しようという現在になっても、すべての授業でフル活用されているという状況になっていません。
それどころか、iPadが一度も格納庫から取り出されていない学校もあるのではないかと思います。
このような現状を聞くと、
「先生たちは何をやっているんだ!」
「早くiPadを使用せよ!」
「税金の無駄遣いだ!」
などという声が聞こえてきそうな気がしますが、
長年iPadを活用してきた私から言わせれば、先生方が使用しないのには、それなりの理由があると思います。
簡単に言ってしまうと、『ICT機器はそろっていても、誰もが使える状況になっていない』のです。
せっかく現場に導入されたiPadをすべての先生方が使用するようになるためには何が必要なのか
今日は、iPadで授業をフル活用し、発信し続けてきた私だからこそ提言できることをお話ししていきたいと思います。
先日、ツイッター上で「#教師のバトン」というのが話題になりました。
教員を目指す若者を増やすために、教員という仕事の素晴らしさをツイートしてもらうはずの機会が、奇しくも先生方の多忙感や負担感を吐露する場になってしまいました。
iPadを設置した国や県、管理職からは現場に「早くiPadを活用せよ」という指令が下りてきますが、ただでさえ、忙しい先生方にとって、新しいことを始めるのは容易なことではありません。
そもそも「使え」と言われても何をどう使えば良いかわからない
現状、教員にとってICT授業はこれまでの黒板、チョーク型授業と別物であり、新しいジャンルに手を出す感覚になってしまっています。
忙しい先生方にとっては負担でしかない学校にあるiPadは授業とは関係のない得体のしれない機器。
「iPadを使え」という指令は、普段の授業にプラスアルファの負担を与えるもの、新しいジャンルに手を出せと言われているようなものになってしまっています。
実際に使ってみるとまったく逆で、当チャンネルで発信しているように、授業が楽で楽しいものに変わるのですが、ICT機器に興味・関心がない方にそれを伝えるのはとても難しいことです。
忙しい先生方が負担感なく、iPadを手にとって授業を始めるようになるためには、ICT授業に積極的になってもらう『ポジティブな理由・条件』が必要です。
では、その理由・条件とは何か。
それは次の3つです。
1.使うと楽になる
2.使うと便利になる
3.使わないと困る
つまり、今やっていることの延長線上にiPadが存在する、しかも、今以上に楽に、便利になることが必要なのです。
わかりやすい例を示しましょう。
生徒にプリントを配布するとき、皆さんは何を使われていますか。
おそらくほとんどの学校でコピー機や「リソグラフ」という印刷機を使用されていると思います。
若い先生方はご存じないかもしれませんが、この印刷機やコピー機が誕生する以前、
学校では「ガリ版」(謄写版)というものを使用して印刷していました。
蝋を引いた原紙に鉄筆で文字や図形などを描き、型紙を絹スクリーンに密着させて上からインクのついたローラーで押圧して印刷するものです。
鉄筆で原紙をこするときの「ガリガリ」という音に由来するそうです。
印刷機やコピー機がある現在、このガリ版を使用して印刷している学校はないと思います。
このガリ版から印刷機へ移行した理由を考えてみると
1.使うと楽になる
2.使うと便利になる
3.使わないと困る
この3つを満たしていることがわかります。
これをICT授業に当てはめるとどうなるでしょうか。
教員にとって大切なことは、黒板・チョーク型授業の延長線上にiPadを位置づけること。
生徒に使わせるならば、教科書・ノート・鉛筆の延長線上にiPadを位置づけること。
では、iPadをそのような存在に昇華させるためにはどうすればよいのか。
現状、決定的に不足しているものが二つあります。
それは、
1.チョークや鉛筆の代わりとなる電子ペンシル
2.黒板やノートの代わりになるノートアプリ
つまり、今はiPadの良さを活かしきれていないだけで、この二つを加えるだけで、iPadが今やっていることの延長線上においてもらえるようになります。
私が提言したいことは二つです。
1.すべてのiPadに電子ペンシルをつける!
2.すべてのiPadに『GoodNotes5』や『ノートアビリティ』などのノートアプリを
インストールする!
これが長年授業でiPadを使い続け、YouTubeで発信し続けてきた私の結論です。
すでにICT授業を始めている先生方はご存知だと思いますが、私たちにとってiPadはそのようなツールになっています。
しかし、ICT機器を使用していない先生方からは、「面倒なことをやっている人」「頑張っちゃっている人」「やる気のある人」などと思われているかもしれません
実際はその真逆で、こんなに楽で便利なもの、なんで使わないんだろうという感覚になると思います。
スマホを使っている方がガラケーにこだわり続けている方を見たらそういう感覚になりますよね。
使ってみたら、もう離れられません。
大切なのは、人々がスマホを自然に手にとったのと同じように、外圧ではなく自発的・内発的に始めることだと思います。
「とにかく使え!」ではなく、iPadが現状の授業よりも楽で便利でなくてはならないものだと思ってもらうことが重要です。
私のこの提言が、少しでも学校現場に眠るiPadたちを目覚めさせる機会になれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
動画でわかりやすく説明しているので、よろしければご覧ください。
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